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この日記について

この日記は、他のリソースから転載したものが大半です。
2005年3月以降の日記は、mixiに掲載した日記を転載した内容が中心です。一部は実験的に作成したblogに書いた内容を移植させています。
2001年の内容の一部は、勤務先のweb日記に記載したものです。
1996年〜2000年の内容の多くは、旧サイトに掲載したphoto日記を転載したものです。
1992年6月〜99年9月の日記の大部分は、パソコン通信NIFTY-Serveの「外国語フォーラム・フランス語会議室」に書き散らしていたものを再編集したものです。ただし、タイトルは若干変更したものがありますし、オリジナルの文面から個人名を削除するなど、webサイトへの収録にあたって最低限の編集を加えてあります。当時の電子会議室では、備忘録的に書いた事柄もあれば、質問に対する回答もあります。「問いかけ」のような語りになっている部分は、その時点での電子会議室利用者向けの「会話」であるとお考えください。

1992年12月20日

 夏にアップしたように、「Quiz」とは試験のことである。
 昨日は秋学期の最終試験の最後の試験があった。試験用紙の表紙には「Quiz final.」と印刷してあり、私は思わず自分がクイズのオーディション番組に参加しているやうな錯覚を一瞬受けてしまった。
 この日の試験は朝9時に始まり、午後2時まで連続5時間続くものであった。試験監督はどちらかというとパリのブラッスリー辺りで朝からワインでもくらっていそうな、何となく気のよさそうなオジさまであった。でも昼飯はいったいどうなるのだろうとこの時は思った。何しろ私に限らず皆いつも通り朝メシは食っていないはずだった。
 試験中、トイレに行くのは自由である。私も1時間半後くらいに催してきたので、一度席をたった。教室の一番後ろの机に座っていた監督のおじさんは、新聞のクロスワードパズルに夢中であった。
 11時頃、そろそろ問題のあらかたに見当がつきはじめたころ、そこかしこでひそひそ声の「議論」がはじまった。「この点はこうあるべきだ」「いやオレはこう考える」等々。中には夢中になって普段の声で議論を始めそうになる者も出てきたので、さすがにこの時は監督が笑ながら(!)注意をした。
 しかし、このおじさんが一服するため廊下に出るや否や、皆待ってましたとばかりいつもの調子で議論を始めるのであった。念のために確認するが、これは試験中の出来事である。ドアは半開きだったので廊下で煙草をふかしている監督にも議論の声は聞こえているはずだが、おじさんは煙草を味わうほうがこの時は重要だと考えていたようである。
 12時15分、皆腹が減ってきた様子であった。一人が「食い物を買い出しに行ってくるけど、何か欲しいものはないか?」と宣言した。皆これを待っていたかのように、「コーラ一本」とか「サンドウィッシュ1つ」とか頼み始めた。監督のおじさんも、「ワシにもサンドウィッシュとビール1本頼むよ」と言っていた。生徒のうち2人もビールを注文していた。
 12時25分、買い出しに言っていたパトリックが戻り、注文品を分配しはじめた。その後は皆試験復帰モードとなったが、サンドウィッシュをかじりながら用紙にかじりつくもの、ビールをぐびぐび飲みながら考えているものなど、実に様々であった。
 なお、試験は持ち込み可であったので、皆ノートやら参考文献を自由に見ることができた。日本の試験と異なっていたのは、試験中他の生徒の文献を借りても特に注意を受けないことであった。だから、試験中に「おいカリム、あの本貸してくれ!」と大声でどなると、当のカリムが分厚い本をぶん投げてよこしたりするのであった。
 1時半、そろそろ終わりが近づいてきた頃。皆最後の確認を始めた様子であった。すると、そこかしこで回答用紙を交換して相互チェックならびに疑問点の指摘が始まった。かなり大きな声で議論をしたものであるが、この時間になると監督の方も何もいわなかった。
 2時、別に「これまで!」の声もなく、皆てんでバラバラに回答用紙を提出していた。私が一番最後の提出であった。
 ちなみにこの日は「情報システム概論」の試験で、問題は一種のケーススタディであった。従って、特に唯一の正解があるという性格のものではなく、どういう視点でどう考えるかを問うことが試験の目的であった。そうは言っても、沈黙と緊張がつきまとう日本の試験とのあまりの違いに、私は一瞬とまどいながらも「ビールを飲みながらの試験もオツなものだ」と思ってしまった。
 前にデータベース論の試験があり、その時は議論の量は少なかったものの、結構似たような雰囲気があった。傑作だったのが、試験開始直後に担当教授が皆にアメを配ってくれたことだった。私が「Bonbon, apres laniere...」とボソリつぶやくと、周囲からは「Tout a fait」「C'est la vie.」という反応が帰って来た。その後、考え込んでいる生徒がいると、教授は再度アメを持って来て激励することを忘れなかった。


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