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この日記について

この日記は、他のリソースから転載したものが大半です。
2005年3月以降の日記は、mixiに掲載した日記を転載した内容が中心です。一部は実験的に作成したblogに書いた内容を移植させています。
2001年の内容の一部は、勤務先のweb日記に記載したものです。
1996年〜2000年の内容の多くは、旧サイトに掲載したphoto日記を転載したものです。
1992年6月〜99年9月の日記の大部分は、パソコン通信NIFTY-Serveの「外国語フォーラム・フランス語会議室」に書き散らしていたものを再編集したものです。ただし、タイトルは若干変更したものがありますし、オリジナルの文面から個人名を削除するなど、webサイトへの収録にあたって最低限の編集を加えてあります。当時の電子会議室では、備忘録的に書いた事柄もあれば、質問に対する回答もあります。「問いかけ」のような語りになっている部分は、その時点での電子会議室利用者向けの「会話」であるとお考えください。

1994年05月16日

 翌、7月2日、こんどはショッピング・センターの窓口に向かった。
 フランス名物の長蛇の列だ。メモに書かれた女性の名札を探したが、どこにも見あたらない。しょーがねーな、と思いつつ、列のひとつに並んだ。
 ひとつ注意すると、日本みたいなカウンターは、現金取り扱い窓口しかない。あとの細かい「ご相談」は、すべて行員と机をはさんで交渉する。その机の前に、行列ができるのだ。
 待つこと三十分、ようやく自分の順番がきた。
 メモを見せる。
「あ、彼女なら、下のフロアーだよ」
 あっさりひとこと。
 あんたじゃだめなの?
「これ、ぼくの担当じゃないから。……はい、次のひと」
 三十分は一瞬で消えた。
 下のフロアーに降りる。
 メモの女性はほどなく見つかった。ツボにはまったときのフランス人の仕事は早い。彼女は部下の行員にてきぱきと命令し、二十分ほどで、ぼくは3万フランを回収することができた。
 が、ここではたと考えた。
 窓口の向こうで、500フラン札の束を行員が数えている。
 いくらなんでも、そんなキャッシュの山を持って帰るのはたまらん。
 札束をいままさにわたさんとす、という体勢の行員を制した。
「あのお、そのまま口座を開いて預けられますかあ?」
 一瞬彼は、え?
 というような表情を浮かべた。
「うん、もちろん。ちょっと待っててね」
 担当者に要件を告げにいったのだろう。
 ほどなく彼はもどってきた。ずいぶんと貫禄のあるおっさんと一緒に。
 交渉は、このおっさんが引き継ぐことになった。
「ええっと、うちの支店で口座を開きたいとか?」
 いっておくが、この交渉は、窓口の行列のあいだ、たちっぱなしでおこなわれたのだ。
「はい、どうせ口座が必要だから」
「きみは外国人のようだけど、滞在身分は?」
「学生です。長期ビザも持っていますよ」
「パスポートを見せてもらえますかな」
 どうぞ、と言って、長期ビザを貼ったページを見せた。実はこの時点で、まだ滞在許可証は申請すらしていなかったのだ。
「まだ、滞在一年経っていないね」
「先週着いたばかりですから」
「ふうむ、そうなると、口座を開くわけには参りませんね」
 げげ。あのキャッシュを持ってかえらにゃならんの??
 おまけに、銀行口座なしで暮らせというのか?
 でも、たしか「地球の歩き方」には、非居住扱いで口座が開けると書いてあった……。
「でも、たしか non residentielで口座を開けるはずでしょう?」
「非居住で?
 いいや、うちでは認めていないよ」
 形勢があやうい。
 こっちにも滞在許可を持っていないという弱みがある。
 やはり3万フランはお持ち帰りテイク・アウトになってしまうのか?
 一年間、銀行口座なしで暮らさなければいけないのか?
 さてさて、おっさんとの交渉はどうなる。待たれる、次回——


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