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この日記について

この日記は、他のリソースから転載したものが大半です。
2005年3月以降の日記は、mixiに掲載した日記を転載した内容が中心です。一部は実験的に作成したblogに書いた内容を移植させています。
2001年の内容の一部は、勤務先のweb日記に記載したものです。
1996年〜2000年の内容の多くは、旧サイトに掲載したphoto日記を転載したものです。
1992年6月〜99年9月の日記の大部分は、パソコン通信NIFTY-Serveの「外国語フォーラム・フランス語会議室」に書き散らしていたものを再編集したものです。ただし、タイトルは若干変更したものがありますし、オリジナルの文面から個人名を削除するなど、webサイトへの収録にあたって最低限の編集を加えてあります。当時の電子会議室では、備忘録的に書いた事柄もあれば、質問に対する回答もあります。「問いかけ」のような語りになっている部分は、その時点での電子会議室利用者向けの「会話」であるとお考えください。

1994年06月07日

 フランスで銀行口座を開くのは、それなりの社会的信用が必要だ。住所確認がかなりうるさく、きちんと居住事実を証明しないと、口座開設はできない。
 自分宛の EDF/GDF、またはフランス・テレコムの請求書があれば、話しは一番手っ取り早い……どころか、身分証明書を提示しても、これらの書類の提示を求められるのが普通だ。
 さて、この時点でぼくは滞在許可証をまだ申請していなかった。ポンピドーのアパルトマンはバカンス貸し。要するに「もぐり」だ。この住所では、口座開設はおろか滞在許可申請さえできない。
 そんなことは最初からわかっていた。
 じゃあ、なぜそれを承知でそこを借りたのか?
 じつは「女神さま」がいたのだ。
 たまたまパリ市内に知り合いが一人だけいた。知り合いといっても、6年前に仕事でアテンドを頼んだだけだ。面識はあとにもさきにもその一度だけ。日本を発つ直前に、何年かぶりで手紙の往復をしただけだ。
 そのひとは、8年前からパリに住む日本人女性で、ご主人はCNRS付属研究所の理事を務めている。そのご主人にも、6年前の研究で少しお世話になった。
 でも、たったそれだけだった。
 パリに到着した3日後、彼女に電話で連絡をとった。オヴニーなどで見つけた物件をリストアップしたのはいいものの、立地条件がさっぱりわからない。周辺環境でも聞ければいいかな、と思って連絡したのだ。
 受話器を取ったのは彼女だった。名を告げると、手紙の往復もあったので、すぐにぼくだとわかってくれた。住処の相談にも親切に応じてくれた。
 この時点で、ぼくは10区 Chateau d'Eauにあるアパルトマンに、ほぼ決めかけていた。もう一軒、13区の Les Gobelins の物件もいいと思っていたが、電話をした時点で、すでにバカンス貸しが入っていた。9月以降ならば、ということだった。
 契約が9月になってしまうと、滞在許可の申請ができない。見るだけ見てみますかと言われたので、まあ、話しのタネ程度にと思い、とりあえずアポだけはとった。
 とにかく、住所を確定させないことには、滞在許可が申請できない。それどころか、カミさんの家族ビザの申請さえできないのだ。
 ひたすら即決優先だ。
 ほぼ8割がた、Chateau d'Eau に住むつもりでいた。大家さんはご主人がフランス人技師だという日本人女性で、電話で話していて、とてもほがらかな感じのするひとだった。とにかくことばに不安がある以上、ついつい日本人の大家さんをアテにしてしまう。
 件の知り合いに相談したところ、Chateau d'Eau は「庶民的な」カルチエだという。いまひとつニュアンスが分からなかったが、便利なところであることは間違いないそうだ。
 彼女に電話をしたあと、再度その大家さんに連絡した。部屋を見せてもらう約束を取り付ける。
 ほかにどうしても借りたいという日本人留学生がいるそうだ。
 大家さんは「できればご夫婦にお貸ししたい」と言ってはくれるものの、そこはやはり早い者勝ちだろう。見て気に入ったら、即、決める必要があると思った。
 念のため、カミさんに国際電話を入れる。状況を一通り話し、即決の了解をとりつける。カミさんのほうは、ぼく以上に状況がわからない。だから、結局「あなたにお任せ」するしかないのだ。
 部屋を見せてもらう当日、約束の時間より30分早く現地に行った。ホテルのあるオデオンから Chateau d'Eauまではメトロで一本だ。
 この日、やたらと蒸し暑かった。
 パリにしては、異様に湿気が多かった。普段はひんやりとしたメトロの駅も、朝からむんむんする空気だった。スラックスが、汗で足にへばりつく。ベルトでしめているあたりが、すこしかゆくなるような陽気だった。
 メトロ4番に乗って、Chatelet、Les Hallesと過ぎる。パリを何度も訪れたひとならわかると思うが、メトロ4番はレ・アールを境にして、車内の雰囲気が相当変化する。
 さてさて、いったい何が変わるのか?
 そして、街の雰囲気はどうだったのか?
 部屋は借りれたのか?
 あるいはライバルに一歩先行されたのか?
 状況はいよいよ緊迫……でも、話しは銀行口座からどんどん逸れる。
 が、大詰めは近いぞ。待たれる次回!


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